崎川晶子:モーツァルト その光と影

☆セシルレコードのCD

崎川晶子がモーツァルトの光と影をフォルテピアノで表現

モーツァルト フォルテピアノによるソナタ集

崎川晶子  フォルテピアノ:F.ホフマン(1790年頃)
CECILE RECORD
IMS0507
税込定価¥3,150-
(税抜価格¥3,000-)
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Wolfgang Amadeus Mozart(1756-1791) W.A.モーツァルト
Klaviersonaten auf dem Fortepiano フォルテピアノによるソナタ集
Fantasie d-moll 幻想曲 ニ短調 K.397
1 Andante-Adagio-Presto-Tempo primo-Presto-Tempo Primo-Allegretto
初めの二短調の幻想曲はモーツァルトの曲の中でも珍しい、コンパクトな形の中にも幻想に満ちた曲です。
即興的な趣で始められ、甘美で物憂げな旋律の後には激しい情念に駆られると言うように場面が次々と変わり、最後は明るく軽やかなロンド風の音楽でさわやかに終わっています。
Sonata a-moll ピアノ・ソナタ イ短調 K.310
2 Allegro maestoso
3 Andante cantabile
4 Presto
この曲には「モーツァルトの光と影」と題した影の部分、何かに駆り立てられるような暗いパッションを感じますね。私はどちらかと言いますと穏やかなものが好きなのですが、何ヶ月か前に病気で入院しましたその時に、人生を含めいろいろなことを考えまして・・・。モーツァルトの音楽を考えたときに、この曲を絶対入れたいと思ったのです。激情のようなものを感じる第1楽章の次には天国的な美しさを湛える第2楽章。緊張感を伴った陰影やニュアンスに満ち、正にフォルテピアノの独擅場といった趣きです。第3楽章は又疾走するような音型がつづき、緊張感に満ちている。短調の曲の中での情熱と言うものが、モーツァルトの音楽を考える上でどうしても必要と思ったわけです。
Sonata F-dur ピアノ・ソナタ ヘ長調 K.533/494
5 Allegro
6 Andante
7 Rondo Allegretto
k.494のへ長調のソナタは原体験に戻ります。実は5年生の時に発表会で弾いた思い出の曲なのです。チェンバロを弾いている私にとって、フーガ調の曲はとてもしっくりきますし、曲のバランスがとてもいい曲ですね。第1楽章は、対位法的書法の中に「光と影」が交錯し、第2楽章は少し複雑に何かを求め、訴えている。そして第3楽章は明るく晴れやかな気分のロンドです。
Sonata A-dur ピアノ・ソナタ イ長調(トルコ行進曲付)K.331
8 Andante grazioso
9 Menuetto
10 Alla Turca Allegretto
k.331のイ長調のソナタは明るく優美で光に満ちあふれている。最初の部分には優しい暖かみのあるテーマと変奏曲があります。第2楽章のメヌエットは洗練された雰囲気を持っていて、第3楽章は有名なトルコ行進曲。恐らくモーツァルトの曲の中でも一番有名な曲でしょう。作曲された1783年は、ちょうどオーストリア軍がオスマントルコ軍に勝利してから100周年にあたっていて、ウィーンではトルコ風のものがはやっていたのでしょう。

データ

フォルテピアノ
Ferdinand Hofmann, Vienna c1790
ウィーンの フェルディナンド・ホフマン 1790年頃作成
Restored by Robert Brown, Oberndorf near Salzburg, 1988
ザルツブルク近郊オーデルンドルフの ロバート・ブラウンによる修復 1988年
Tunner: 池末 隆


楽器制作者 Ferdinando Hofmann フェルディナンド・ホフマンについて

フェルディナンド・ホフマン(1756-1829)は 1784年にウィーンでマイスターになり、精力的にフォルテピアノを作っていた。その姿勢は創意工夫に富んでおり当時の偉大な楽器製作家シュタインの楽器に独自の工夫をくわえている。ホフマンのフォルテピアノは音色の美しさでも群を抜いており、シュタインのピアノより力強くしかも柔らかく広がりがあり、ヴァルターよりは軽やかである。

まさにモーツァルト時代のフォルテピアノと言うのにぴったりの、ホフマンが製作した1780年代の半ばから後半にかけての数台のうち6台は現在も残っており非常に貴重な資料であると共に、この時期のウィーンのピアノの音色に対する好みがピアノのアクション機構とともに伝えられている。(「チェンバロ・フォルテピアノ」渡邊順生著より)

テクニカルデータ

Exsecutive Producer: 宇田川貞夫
Recording Producer: 宇田川貞夫
Recording Engineer: 小伏和宏
Editor: 宇田川貞夫

Recording Location: 横浜市栄区民センター リリス
Recording Date: 6-9, May 2005

Cover Art:小林 克
Cover Design:田崎郁子

Technical Data
Microphone:B&K 4006
Pre-amplifire:Milennia Media HV-3B
ADC:dcs 900C
Master Clock:Rosendahal nanoclocks
Master Recorder:TASCAM DA-45HR
Power Supply:SINANO HSR-510
Pre-amplifire:BRYSTON BP20
Electric crossover:Accuphase PRO-F50
Power Amp.for HF:BRYSTON 3B
Power Amp.for LF:Intercity
Loud speaker(HF):Waon Recording Monitor
Loud speaker(LF):Cecile Sub-wppfer

Digital Editing System:Samplitude


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◎「モーツァルトその光と影」レコード芸術2006年6月号特選盤

推薦  濱田滋郎

先般、渡邊順生とのフォルテピアノ・デュオにより、、非常に見事なモーツアルトをCD上に披露した崎川晶子が、今度は単身でここに登場した。ソナタを3曲、ファンタジーを1曲。おそらく今最も気分よく、気合を込めて弾けるのであろう曲目を揃え、おのずと充実したリサイタルを彼女は繰りひろげる。『モーツァルトの光と影』と題しているが、ニ短調の幻想曲(k,397)からイ短調のソナタへ、そしてヘ長調(k.533,k494)を経てイ長調《トルコ行進曲付き》のそれへと、一枚のアルバムにモーツァルトの多彩なパトスのあり方を映し出すには、まことに有効かつ有意義な選曲が成されている。

演奏ぶりは楽器―ちなみに、使用のフォルテピアノはフェルディナンド・ホフマン(1790年頃ウィーン)-の性能、特質を生かしてデリカシーに富んでいるが、いっぽうたんに古雅な雰囲気の内に遊ぶという性格のものでもなく、随所に清新な覇気を、積極的な生命感の発揚をも感じさせる演奏となっている。すなわち、k310に盛られている劇的なものは、哀切な物と相まって、見事に表出されている。ヘ長調ソナタの高度な構築性と遊びの精神の兼ね合い、イ長調ソナタの親しい優しさと天才ならではの創意が綾なす意匠、いずれも鮮やかに、姿よく弾き表されて言うところがない。k331の第一楽章など、この快適さにおいてならば、主題のみならず各変奏ともリピート入りで、さらにじっくり味わわせて欲しかったかな、と思われたほどである。 フォルテピアノによる、という処に寄りかからず、奏者の音楽づくり、モーツァルトとの呼応の確かさ、深さによってこそ光る1枚にほかならない。


推薦  那須田務

先ごろ、渡邊順生とモーツァルトのクラヴィーア・デュオやチェンバロによる現代作品の『夢見る翼』がリリースされた崎川晶子によるモーツァルト・アルバム。使用楽器は渡邊氏のホフマン(1790年頃)。渡邊氏とのデュオや4手連弾を通じてこの楽器の特質を知り尽くしそれを生かし切っている。エレガントで知と情のバランスが取れた演奏をする方だと思うのだが、《ソナタ》イ短調の第1楽章は、思いのほか激情を迸らせて驚かされる。

第2楽章は穏やかで澄んだ響き。終楽章もテンションの高い激しい攻めの演奏だ。

《ソナタ》ヘ長調k533+k494は多様なアーティキュレーションと迫真のデュナーミクが、このソナタの多分に見過ごされがちな起伏に富んだドラマをスリリングな感興とともに聴かせている。即興的な装飾音をあまり弾かないのはこのモーツァルトの特徴といえる。また、歌謡的な旋律の美しい緩徐楽章では多様な和音それぞれの個性的な色合い(古典調律の強みだ)や変音装置(モデレーター・ストップ)が演奏に現代のピアノでは味わえない奥行きとカラフルな色彩感をもたらしている。K330は変奏曲の繰り返しをしないのはひとつの解釈なのだろうが、音楽的なバランスの点ではどうだろうか。とはいえ、このソナタも率直かつ自在に、情緒豊かに奏でられた佳演である。


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