02-レコーディングまであと25日

チェンバロCD録音顛末記

2007年3月16日(金)  初顔合わせ  (レコーディングまで25日)
場所:群馬 大木和音さん宅
メンバー:宇田川先生・大木・狩野・弟子1

09:30 宇田川先生、自宅を出発
13:00 群馬 大木さん宅に到着

大木さん宅の愛犬モカを囲みながら、穏やかなお昼の時間が過ぎたあと、早速大木さんに BachのFantasie und Fuge(BWV 904)を弾いていただくことに。
今回のレコーディングで「チェッカー」(音のかすれ・ミスタッチなど、物理的な問題をチェックする)という大事な役目をいただいた弟子1はチェック用の色鉛筆片手に、後方で耳を傾けていました。

まず第一声、先生はどんなコメントをするのだろう・・・
演奏する側からすると一番初めのこの演奏が一番緊張するだろうなぁ・・・!
私までドキドキ・・・・・・
そもそも、レコーディング本番の前に、群馬まで先生が大木さんに会いにいくという その意味は何なんだろう。
頭の上には無数の ?????の弟子1。

緊張感張り詰める中、大木さんの演奏が終わり、静まり返る現場。 突如、先生の一言。
「あがってる?(笑)」
「フーガが圧倒的にすごい曲だからねー。はははー(笑)」
とそれはそれは満面の笑み。

大木さんと弟子1、同時に、安堵感混じる深い溜め息。。。ふぅーーーー。
そして先生は真剣な面持ちで語り始めました。

宇田川
僕は基本的に、チェンバロっていう楽器のニュアンスは、
アーティキュレーションがあるかないかっていう問題と
それから・・・
左手と右手をどのぐらいずらすかっていう問題に
集約できると思ってるのね。

そういう意味では例えば、バスの情感を出すためにはどうするかっていうような作業を、いくつかしなくちゃいけないところがあると思うんだけど・・・

大木
「バスをもっと出す・・・?」

宇田川
必要あるところはね。そのために、前の音をもうちょっと処理しといて、バスのアーティキュレーションをもうちょっと際立たせるとか。 例えば典型的なのはここだよね。(楽譜で指示)
一回ちょっとexampleとしてやってみてくれる?
どういうものを僕が目指しているのか。
これは最終的に録った音をコンピュータで、例えばテイク3とテイク4のここを繋いで・・・とかするわけだけども、問題がなければそのままいきたいわけ。

というのは、一つも繋がないで、できる演奏があるなら、絶対それがいいわけ。理想はあなたの本番のテープをそのままCDにするのが理想なんだよ。
ただし、どうしても本番はミスが出てしまうので、ミスを気にしなければ本番の方がいいんだけどね。

「今のだとアーティキュレーションがはっきり聴こえる」っていうレベルのところを、やっとかないといけないんだよ。
今弾いてもらったのは、明らかにあなたの思っているように弾いてらっしゃるんだけど、それを、 "そう聴こえるように"弾かなきゃいけない。

大木
伝わってこない・・・?

宇田川
うん・・・そうだね。なんかね・・・、あなたの基本的に持っている音楽をいじるつもりはないので
そうすると、作業がきちっといってないところとか、流れがまずいってところなんかを、チェックせざるを得ないんだよね。
それで、これも知っていてほしいんだけど、録音の現場で、たいてい演奏に生き生きさがあるのは"一回目"

大木
あ~・・・(笑)わかる気がします

宇田川
「な?(笑)、ところがそれを一回目をまず録って、自分では一生懸命やるし・・・ただしミスは多いんだな。
それを今度ちょっと聴いてみませんか?って我々が録音してる部屋へ来て、スピーカーの前で、あなたの今弾いたものを一回聴いてみせられるわけ。
それで「こことここと、ここが変だぞー」とか言うとバーーーーーっと今度は守備にまわるの(笑)
攻撃から守備。一気に安全体制。守りに入る。安全策を講じて。そこが問題なんだよ。
そうすると、僕としてはたいてい一番勢いのいいのを選んでそのミスをどっかから拾ってきて貼る作業を、いっぱいしなくちゃいけない羽目になるわけ(笑)
そこはいつも頭に入れておいて。
弾く度に。
録音現場でも今でも、弾く度に自分らしく弾くの。
大変だけどね(笑)
失敗なんて絶対あるからさ。
いや~、完璧に弾くやつなんて
うさんくさくてたまんねーよ!(爆笑)
それより、音楽的に勢いのあるほうがいい。

先生が話すごとに空気が和らいでいく現場。
・・・話を聞いているとどうやら
勢いと音の処理、両方をクリアできることが鍵のよう・・・


<< その3へつづく>>


このページの内容に関係する(かもしれない?)本、DVD、CDのリストです。


Trackback on "02-レコーディングまであと25日"

このエントリーのトラックバックURL: 

"02-レコーディングまであと25日"へのトラックバックはまだありません。