05-緊張の録音開始

チェンバロCD録音顛末記

今回のエアリスホールは、収容人数1005人という大規模なホール。
しかし舞台側から見ると、そんな大きな規模を感じさせない、どこか上品でコンパクトな客席で、調律師の狩野さんも「そんなに大きく見えないよね~」とおっしゃっていました。

実際人の座っていない空の客席でも'しん・・・'と静まりかえるその空気は、なにかしらの存在感を放っています。

大木
ふぅ~~~・・・

深呼吸をし、その空の客席を右に見ながら、どんどん集中を高めていく大木さん。
自分の中で高まる気持ちと、澄み切った冷静な頭。
どちらも同時に存在させるための大切な集中の時間。

宇田川
じゃあ、一回録ってみますか?

宇田川
Take1です。どうぞ。

こうして、Italienisches Konzert の軽快な演奏から録音が開始されたのでした。


話は少し移りますが今回使用しているチェンバロは大木さんの所有です。

モモセハープシコード製
フレミッシュハープシコード after 'Dulcken(デュルケン) 1745'(1993年製)

という楽器です。

この大木さんの「 Dulcken」は二段鍵盤で、全長 2m60cm(ケースに入れると2m70cm近く)にもなる長大なもので、チェンバロの中でもかなり大きなサイズのものです。チェンバロとしては非常に重く、運ぶのにも大人3~4人で持たないといけません。

余談ですが、調律師の狩野さんはこのチェンバロを大木さん宅から移動させるために愛車の VOLVOには入りきれないということで、急遽、今回のレコーディングのためトヨタのエスティマに買い換えたほど!!!

晴れてエスティマにすっぽりと収まり、この 'Dulcken' は運ばれてきたのでした。

では、この 'Dulcken' の特徴を少しあげてみますと・・・
まず、フレミッシュで、倍音が比較的低いところにある印象があります。
外観は二重のベントサイドで アクションは、 ジャックの底部がドッグレッグ(名の通り、犬の足のような形) になっていて、カプラーの際の8'・8'・4'の扱いが、普通と少し違います。

また、この楽器はグスタフ・レオンハルトが1960年代から70年代にかけて レコードで頻繁に使用しており、一躍世界中の人々の知るところとなりました。 (ほかに歴史的チェンバロを弾く奏者がほとんどいなかったこの時代に、この楽器に感心を抱く世界中の人びとにとってのシンボル的な存在となったそうです)
≪参考文献:  渡邊順生 著 「チェンバロ・フォルテピアノ」 東京書籍

また、この楽器のオリジナルがロベール・コーネンの元にあることも、よく知られた話かも知れませんね。


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